肝炎医療コーディネーター座談会 西日本編

HCV抗体陽性者の受検・受診・受療にむけた活動 「肝炎医療コーディネーターのはじめの一歩」

2021年5月24日(オンライン開催)

(司会)難波志穂子さん

木下一枝さん

立木佐知子さん

野村真希さん

増井美由紀さん

矢田ともみさん

はじめに

厚生労働省の事業として肝炎医療コーディネーター(以下、コーディネーター)の養成が開始されてから約10年が経過しました。その後、養成は全国で行われるようになり、2020年現在、20,000名を超えるコーディネーターが活躍されています。1)
一方で、コーディネーターの認定を取得したが、何から手をつけてよいのかわからない、この資格をどのように活かしていけばよいのか悩んでいる、といった声も耳にします。そこで、コーディネーターとして幅広い活躍をされている5名の方にお集まりいただき、「モチベーション」と「使命感」をキーワードに、ご自身のご経験をお話しいただきました。(難波志穂子)

~肝炎医療コーディネーターになってまず取り組んだこと~

最初は不安もあったけど、自分にできることから始めた。
身近なことから取り組み、徐々に活動の幅を広げていった。

立木 私が最初に手応えを感じたのは、院内の肝臓病教室の開催です。開始した当初はなかなか人が集まらなかったのですが、開催日を肝疾患の外来日にしてみたり、参加しやすい時間を調べたり、案内の方法を変えてみたり、そうした工夫をすることで、毎回20人以上に参加していただけるようになりました。それが嬉しくてモチベーションの向上につながり、さらに患者さんに記入していただいたアンケートを見てやりがいも感じました。

木下 なにか新しいことを始めよう、というよりは、身近なところでまず何ができるかを考えるとよいと思います。私の場合は、コーディネーター認定を取得後、インターフェロンが主体だった治療がインターフェロンフリー治療に変わっていったので、治療に関する知識を身につけるとともに、患者さんにどのような説明をしたらよいかを考えるようにしました。また、職場でもプライベートな場でも、身近な人と肝疾患について話をすることを心掛け、まずは一方通行な情報提供になってもよいので、肝炎治療の重要性を伝えるようにしました。

難波志穂子さん

岡山大学病院 新医療研究開発センター
治験推進部 助教

できるかな? と思うことをまず言葉にしてみよう!
はじめの一歩は、誰かに伝えることで実現化♪

増井 山口県では平成24年度からコーディネーターの養成事業が開始されました。当時はまだ、コーディネーターの業務がよく知られていなかったので、まず肝疾患センターの医師、看護師、肝疾患相談支援室とで話し合いの場を設け、それぞれの職種の役割分担を検討しました。その後、地域での啓発活動、コーディネーターのための研修会などを開始しています。
私自身について言えば、まず自分の存在を院内だけでなく患者さんとそのご家族に知っていただく必要があったので、「肝疾患相談員」というバッジを作ってアピールするようにしました。それをきっかけに相談してくれる方が増え、また、相談していただくことが自分のモチベーションアップにつながりました。

野村 私が肝疾患センターに勤務し始めた8年前は目立った活動がなく、相談件数も少ない状態でしたが、肝臓病教室の開催や地域のコーディネーターの養成に関わりたいという希望を当時の消化器内科の教授に相談し、2014年頃から積極的な活動を行っています。今では、熊本県内で約500名のコーディネーターが活躍するようになりました。新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年からは思うような啓発活動ができていませんが、2021年は活動を強化していこうと計画を立てているところです。

矢田 肝疾患センターに配属されてから4年目になります。もともとは看護師で、肝疾患に関わることになったためコーディネーターの認定を取りました。最初は何をしていいのかわからなかったのですが、患者さんと接する中で、自分ができることから少しずつ始め、活動の幅を広げてきました。ここ3年ほどは、佐賀県全体のコーディネーターの養成やサポート業務が中心になっています。また、自分の経験だけでなく常に現場のコーディネーターの声を聞きながら、コーディネーターにとっても患者さんにとっても役立つ啓発資材の作成なども行っています。

木下一枝さん

広島大学病院 肝疾患相談室 看護師

大切な人、身近な人、そして周囲の方たちへ、思いやりと情報のお裾分けから始めてみませんか?
あなたの言葉で、きっと誰かの未来が変わります。

~肝炎医療コーディネーターになってよかったこと~

患者さんの「ありがとう」が大きなモチベーション。
コーディネーター業務を通じて、多くの仲間からの刺激が得られる。

立木 この仕事をしているのは院内では私1人なので、相談できる人も少なかったのですが、研修会などで他の相談員やコーディネーターさんがどのような活動をされているかを学んだことが、私にとって大きなターニングポイントになりました。自分だけでは難しいことも、協力してくれる仲間が増えることで実現することがあります。また、その仲間がまた次の仲間を連れてくるというつながりも生まれています。

木下 私は、広島県の統括コーディネーターという役割をいただき、県内のコーディネーターさんの支援を行っていますが、一方で、内科外来の看護師として患者さんやそのご家族に対して受検や受診についての声かけを行ったり、肝臓病教室の案内などもしたりしています。そうした活動は患者さんの健康や生活にも大きな影響を及ぼすことがわかり、さらにやりがいを感じるようになりました。

増井 コーディネーターになってよかったことは数えきれないぐらいありますが、患者さんやご家族から「心強い」「ありがとう」と感謝の言葉をいただく瞬間がとても嬉しいですね。その時に、コーディネーターの使命感を感じ、もっと頑張ろうと思います。患者さんは少なからず悩みや不安を抱えているので、相談できるコーディネーターはとても強い味方になると思います。

立木佐知子さん

徳島大学病院 肝疾患相談室 看護師

一人では難しいと思うことも仲間が増えれば実現できるかも知れません。多くの職種の方が肝炎医療コーディネーターになることで、活躍の場は大きく広がります。

野村 コーディネーターになって間もなく、グループワークの開催を担当するようになりました。それまで私は、グループワークに参加する側の立場でしたが、開催する側になったことで、どうすれば参加者に楽しく学んでいただくことができるかを考えるようになりました。とても難しかったけれど、やりがいを感じるとともに、参加された方がみな熱心であることに心を動かされました。また、グループワークでの学びを今後の活動に役立てたいと言っているのを聞いて、自分のモチベーションも高まりました。

矢田 患者さんに説明するときに、「こういう資材があったら便利だな」など、患者さんとコーディネーターの両方の視点で資材を作成するようにしています。例えば、肝炎の予防からフォローアップまで活用できる「Kantomo」という資材集を作ったり、思わず笑ってしまうようなユニークな動画を作ってみたり。コーディネーター業務の質の向上について考えているときはとても楽しいです。また、そうした活動を通じて多くのコーディネーターと意見を交わし、つながることができることが自分のモチベーションになっています。

野村真希さん

熊本大学病院 肝疾患センター 相談員

多職種間でベクトルを合わせて患者さんを支えることのできる
とても意義のある活動です。一人では難しいことも、いろんな人とつながることでできることも増えます!
一緒に輪を広めていきましょう!

~経験を積んだ肝炎医療コーディネーターからのメッセージ~

心配しないで。みんなそれぞれのスタンスで頑張っている。
日々の業務の中で感じた楽しさは伝播する。

立木 私が業務に関していろいろ提案したり、意見を述べたりすると、「立木さん、楽しそうですね」と言われることがあります。楽しそうに見えることは、悪いことではないですよね? 周囲の人にも、そういう楽しさを広げていけたらいいなと思っています。また、私たちの仕事は、肝炎の患者さんたちの健康維持にもつながります。そこに、この仕事のやりがいがあると考えています。

木下 「自分にはまだ知識がないから、知らないことを聞かれたらどうしよう」と考えている人もいるかもしれません。でも、患者さんからの質問にすぐに答えることができなくても、慌てたり、焦ったりしなくて大丈夫です。調べる時間を頂いて丁寧に答えればよいですし、肝疾患相談室に気軽に相談すれば、スタッフも力になってくれます。1人だけで頑張ろうとするのではなく、仲間と一緒に活動を続けていくことが大切だと思います。

増井 立木さんと同じように、私も生き生きと仕事をしていて楽しそう、と言われることがあります。もちろん落ち込むこともありますが、自分が楽しまないと周囲の方も楽しんでもらえないかなと思うので、どうやったら楽しくできるかを常に考えるようにしています。また、院内にも院外にも、支えあったり励ましあったりできるたくさんの仲間がいます。そうしたつながりも大切にしていきたいと考えています。

増井美由紀さん

山口大学医学部附属病院 患者支援センター
肝疾患相談支援室

「できること」を見つけるには「意識すること」。
一人一人の力はとても大きい。
みんなで力を合わせると、もっと大きな力になる。

野村 コーディネーターの業務は、多職種間でベクトルを合わせて患者さんを支えることのできる、とても意義のある活動です。1人では難しいことも、人とつながることで可能になるので、皆さんと一緒に輪を広めていきたいと思っています。また、「やらないといけない」ではなく「やったら楽しい」というスタンスで業務を継続できたらと考えています。

矢田 大切なのは、やりがいを持つこと、そして自分が楽しむこと。自分が楽しむことで、仲間が増えるきっかけになると思います。つい、目立つ活動をしなくてはと考えがちですが例えば看護師ならば、問診のときに「検査を受けたことがありますか?」と聞くだけ、事務の方だったら、壁にポスターを貼るだけでも立派な活動です。自分の立場や強みを生かし、仕事の延長線上でできる活動から最初の一歩を踏み出すことが大切だと思います。

矢田ともみさん

佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター
相談員

あなたの強みを生かしてみませんか??
あなたのやれることからまず一歩。
安心してください。あなたには仲間がいます。

おわりに

すべてのことを完璧に行おうとするのではなくて、身近なところから始める、できるところから始めることが大切なメッセージではないかと思いました。また、1人で行うのではなく、仲間を作って、一緒に考え行動する、そして、1人で悩まずに仲間と相談して支え合いながら進めることが業務の質を高める秘訣と言えるかもしれません。
本日お話しいただいた5名のコーディネーターの皆さんは、それぞれが目標を設定し、モチベーションを維持しつつ、また楽しみながらコーディネーターとしての業務をなさっていることがよくわかりました。もちろん、患者さんの健康に責任を持つという使命感もお持ちです。これをお読みになったコーディネーターの皆さんの活動の参考になれば幸いです。(難波志穂子)

1)厚生労働省. 国及び自治体の肝炎対策の取組状況について. 第25回肝炎対策推進協議会資料1(令和3年1月15日)